大地震で倒壊した物件の共通点
2022年07月15日
大地震で倒壊した物件の共通点
前回の記事では、石川県と熊本県で6月に発生した震度5-6クラスの地震を受けて、主に3つのポイントについてまとめました。
・震度6弱を観測した石川県の住宅被害の状況
・新耐震基準と旧耐震基準の違い
・今後の大地震予測
前回の記事を読んで頂いた方は、もしかしたらこう感じたかもしれません。
「旧耐震の物件を買うのはやめた方がいいんじゃないか」
旧耐震基準では、そもそも震度6以上の地震は想定されていません。しかし、震度6以上の地震は2011年3月に発生した東日本大震災以降、29回も発生しています。
旧耐震基準に対してネガティブなイメージを持つのはごく自然なことです。
震度6を超える地震が起きたとき、旧耐震の物件はどれくらい被害を受けたのでしょうか。
東日本大震災を例に、マンションの被災状況を確認しましょう。
2011年3月に発生した東日本大震災はマグニチュード9.0、最大震度7を観測し、1900年以降世界で4番目に大きな地震であり、日本観測史上最大の地震でした。
では、この東日本大震災で大破(倒壊し、住めない状態)したマンションは、何件あったのでしょうか。
出典:東日本大震災 宮城県マンション 被害状況報告 | 震災レポート
何万件もの建物が倒壊したイメージがあると思いますが、答えは「1件」です。
分譲マンションとして唯一「大破」認定されたのは仙台市宮城野区福室にある「サニーハイツ高砂」で旧耐震の物件でした。
これは東京カンテイが震災から約半年後の2011年7-8月に行った調査で、宮城県内の1460棟のマンションを調査対象としています。
では、中破(大破まではいかないが、大規模な補修・補強が必要)認定はどうでしょうか。これでも宮城県全域で「15件」です。
15件の内訳は、新耐震基準が12件、旧耐震基準が3件です。
「おや?」と疑問に感じた方もいるはずです。新耐震基準の方が、中破認定されている数が多いのです。これはなぜなのでしょうか。
調査結果を読み進めていくと、被災度合と地盤に相関性があることが指摘されています。
例えば、青葉区は仙台市の中心地であり、歴史も古く、古い住宅街が点在しているエリア。ここは旧耐震基準の建物の割合が31.8%と、仙台市の旧耐震の割合16.4%よりも高いにも関わらず、被害が少ないだけでなく耐震基準による被災度に差が表れていません。
つまり、旧耐震のマンションでも、地盤の堅固な高台に建築されている場合には被害が少ないという事実がみえてきます。
反対に、泉区に代表されるような川や湖沼が数多く存在する地盤が弱いエリアは、被災度が高い。泉区で被災した15棟は全て新耐震基準であることからも、耐震基準より地盤の良し悪しが被災度に対する影響が大きいことが分かります。
東京カンテイはこのレポートでこう結論づけています。
“東日本大震災においては、新耐震と旧耐震の耐震性能の差よりも、その土地の地盤や地質の良し悪しがマンションの被害の度合いを決定したことは本稿の分析から明らかである。地盤や地質、地形の問題は最も注意を払うべき問題であると言えるだろう”
旧耐震だからダメ、新耐震だから大丈夫というわけではなく、地盤や地形、地質を含めた総合的な判断が必要となるのです。
皆様も物件を購入するか否かの判断材料のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。
市や自治体が発行しているハザードマップを参照すれば、地震発生時の揺れやすさや液状化のしやすさなどがわかります。
是非参考にしてみてください。