「事故物件」新たにガイドラインが制定

2021年11月19日

「事故物件」新たにガイドラインが制定

「事故物件」の取り扱いについてガイドラインが制定

 

今回のテーマはいわゆる「事故物件」についてです。国土交通省が発表したデータによると、2019年の自宅での死亡者数は18.8万人。自宅での死亡者数は、13.4万人(2000年)から18.8万人(2019年)と5万人増加しています。死亡者数全体が増加傾向にあり、今後も自宅での死亡者数は増加するだろうと考えられています。

「事故物件」新たにガイドラインが制定1

参考:国土交通省

 

孤独死も増加傾向にあります。東京都区内で発生した孤独死は約5,500件。うち7割以上が65歳以上でした。孤独死の死因の約6割は病死で、約1割が自殺です。自殺者数は10年連続で減少傾向にありましたが、2020年の自殺者数は2019年より912人(4.5%)多い2万1081人で、リーマン・ショック後の2009年以来、11年ぶりに前年を上回りました。

 

このような状況を鑑みると、これから中古物件を購入する予定の方が検討する物件の中には、かつてその物件で人が亡くなった事実がある物件も出てきやすい状況といえます。実際につい最近1,000万円以下の比較的低価格のコンパクトマンションの売却情報を見ていると、数多くの「心理的瑕疵あり」「告知事項あり」の物件を見ました。

 

心理的瑕疵物件とは、住む際に心理的な抵抗を感じる物件のことをいいます。これから買おう借りようと思っている部屋で前の居住者が自殺をしていたり、殺人があったりした場合、多くの方は住みたくないと感じるのではないでしょうか。よって、心理的瑕疵があるかどうかは告知する必要があります。これを告知義務といいます。

 

貸主や売主は、心理的瑕疵があることを借主や買主に告知する義務を負っています。これは宅地建物取引業法で定められており、契約時に書面に記載した上で説明しなければいけません。しかし、この告知義務、どこからどこまでを告知しないといけないのか、いつまですべきなのかという明確な基準がなく、様々な問題が起きていました。

 

例えば、売主さんや不動産業者によって対応のバラつきが出たり、賃貸オーナーからすると高齢者への賃貸は孤独死を恐れて避けることにより、特に単身の高齢者が賃貸物件を借りにくくなったりするなどの問題が起きており、国土交通省により新たにガイドラインがつくられました。それが「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」です。

 

ガイドラインでは、告知する必要がない事項として下記の3つの点が示されました。

①自然死または不慮の死(ただし、長期間放置されて特殊清掃が入った場合は除く)

②①以外の死(自殺や他殺等)、特殊清掃が入った①の死から3年が経過した場合

③隣接住戸もしくは、日常生活で使用しない共用部分で発生した①以外の死(自殺や他殺等)、特殊清掃が入った①の死

 

②③の場合でも、事件性が高く社会に与えた影響が大きい事案は告知する必要があります。告知する場合は、発生時期、場所、死因、特殊清掃が行われた場合はその旨を告げることが求められます。このように明確な基準をつくることで、いわゆる事故物件のトラブルを未然に防ぎ、安心して物件の取引ができるようにガイドラインが制定されました。

 

正しく知って、正しく恐れる。イメージだけではなく、信頼できる数値やガイドラインをもとに判断すること。これが住宅購入の正しい怖がり方ではないでしょうか。今後、心理的瑕疵物件や告知事項ありの物件に出会った際は、是非一度ガイドラインをご一読頂くのをオススメします。

 

参考:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」

 

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